記号・表象・象徴
Sign, Rrepresentation, and Symbol
解説:池田光穂
次の3つの言葉を区別しましょう。
これらの言葉は、それらの定義をめぐって論争すら引き起こす難解と言えば難解なものです。しか し、私たちは、とりあえず暫定的に、この3つの言葉を区分し(頭の中を交通整理して)、これからの議論を円滑に、かつ生産的にすすめて参りましょう。
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記号、表象、象徴の意味は、相互に関連しており——戦争と紛争のようには——お互いに共通する意 味があります。次の3つの(便宜的)定義をみれば、三者間には厳密には区分しにくいことがわかるでしょう。
記号(sign) | サイン。何かを指し示すことを通して意味 を発生させるもの。意味を発生させるかわりに、音を声に出すこともある(例:発音記号)。指し示す記号表現(signifier、意味するもの)と指し示 される意味(signified、意味されるもの)の関係は規則的に決まっている。このような性質に注目するのが、記号論/記号学としての言語学である [→ソシュール]。何かを指し示すことを通して意味を発生させるもののうち、記号よりも規則性が緩やかなものを、象徴とよぶ。 |
表象(representation) | 表象とは「誰かあるいは何かを、代 わりに話したり、表現したり、表したり、することです」。 代表、再演の意味も ある。あるものを別なもので代表させるもの。あるものを別のもので表現するもの。こ んな単純なことなのに、なぜみんなは、表象(表現や上演という「表現」もしばしば使われます)という言葉と概念をめぐって大騒ぎするのでしょうか? それ は、人間にとって、表象行為というのは、ホモ・サピエンス(知恵ある存在)にとって基本的にいつもおこなっている基本的なもので、表象のことがわかれば、 人間を理解することに、大いに貢献するからです。表象の規則的側面に着目すれば表象は、おもに記号論をつかって考察するこ とができる。表象をより広くて曖昧な[解釈]レベルで分析したければ、象徴に関する理論(哲学・文芸批評・精神分析など)がある。表象は記号と象徴の中間 的な位置づけであると考えると、表象の分析は、さまざまな理論によって分析できることがわかる。表象には、記号がもつ規則性やそれを厳密に分析できるとい う意味から、象徴研究のような幅広い意味理解という意味も兼ね備えているので、もっともルーズで曖昧な意味の総体とも言える。表象文化とか文化表象 (cultural representation, representation of culture)という用語が流布した背景には、文化という記号とも象徴とも受け取れる幅広い領域の社会現象を、表象を鍵概念として捉えようとする試みで あり、また文化もまたきわめてルーズで曖昧な意味を内包している[→「文化」概念の検討:連続 講義]。 |
象徴(symbol) | 記号や表象よりも、さらに広くて曖昧 な意味表現の体系のことをさす。「象徴は自然的連関よりも恣意(しい)的連関に、行動よりも思考に、「もの」よりも関係に結び付くもの」と塚本明子 (「スーパーニッポニカ事典」小学館)が表現するように、象徴は指し示す意味の範囲がもっとも広いものといえる。文化による象徴体系の研究分野のひとつに 象徴人類学(symbolic anthropology)というものがある。 |
【附録】
リンク
文献
その他の情報: metaphor: metonymy: synecdoche:
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